猫が1匹いない。やっぱり、こうなるか…。
西宮に引っ越すと決まった時から、予想はできていた。家の中にいればいいけど…新しい家なんだから、うっかり外に出ていってしまっていたら、帰ってこれないかもしれない。
…と考えていたら、1階の寝室へと足が向いていた。クローゼットの折戸が開いている。ノーマ・カマリのマキシワンピース3着の裾あたりに、タビがいた。小さめの段ボールの中に、丸まっている。もう10歳を超えたおばあちゃんなので、引っ越しで疲れたのかもしれない…と考えていたら、ピクリと顔を上げた。何にもしてない癖に「引っ越し、大変だった」みたいな顔をしているので、思わず笑ってしまう。
「ぷすっっ」不平そうな音を残し、タビはテテテッと部屋をでていった。猫は、気持ちが読めるのである。
それにしても、この荷物は何だろう?ピンクの模様がプリントされた段ボールはフェリシモのヤツだけど、中身に心当たりがない。ファイルがいくつか、色んなイラストの柄のノートがたくさん。
「前に住んでいた人の忘れ物だな、きっと。」
一番上の青のファイルを取り出すと、何かがヒラリと落ちた。
…古い新聞の切り抜きだ、1995年1月の日付で、所々に黄色のマーカーが引いてある。挟んであったところをを開いてみると…ワープロでかいた原稿だ。この人は、ワープロで日記を書いて、プリントアウトして保存していたんだな。
”1月17日(火) 20日以降、プラザで記載
この日、番組開始してすぐ、兵庫県南部地震が発生・・・・”
番組?地震?なにっ?
目が勝手に、ワープロの印字を追っていった。